(茨城・水戸市)交通不便地域でタクシー活用

2017(平成29)年3月25日(土) 7面

全国初 国、市、事業者が実証実験

公共交通機関が利用しにくい地域で移動手段を確保するため、茨城県水戸市の国田地区(上国井町、下国井町、田谷町)で現在、昼間の時間帯にタクシーを活用した実証実験が行われている。国と市、タクシー事業者と連携した全国初の実験で、地域のニーズに合わせた交通網の構築に向けた取り組みとして注目されている。推進してきた公明党の黒木勇市議はこのほど、同地区で関係者から状況を聞いた。

昼間の時間帯 1回1000円
病院などの指定目的地へ

国田地区は、市北部に位置し、人口約2500人で65歳以上の高齢化率が35.7%。地域と中心市街地を結ぶ路線バスが昼間の時間帯に全く運行されたいないため、同地区が実証実験の地域に選ばれた。実証実験は、タクシーの稼働率が比較的低い午前10時から午後4時までの6時間、市が事業者からタクシー2台を借り上げて実施。

対象は同地区の住民で、自宅から水戸市内や同地区に隣接する那珂市内の全病院のほか、市役所三の丸臨時庁舎の指定目的地の行き帰りに利用でき、料金は1回片道1000円。路線バスや鉄道との併用を促すため、茨城交通バスの茨大前営業所やJR水郡線の上菅谷駅までの利用は、1回片道500円。

同地区内の国田市民センターから比較的近い水戸済生会総合病院まで利用した場合でも、通常料金だと片道約2500円かかる。運行業務を担っている観光第一交通株式会社の篠原英夫取締役は、「タクシーの便利さや料金面での使いやすさを感じた人がリピーターになっている」と話す。

新しい移動手段のモデルに

市によると、1日の利用実績は、2月で1台当たり1.3回程度。利用者には、移動の車中で時間帯や料金などサービスに関するアンケートに協力してもらっているという。利便性の周知を進めるには一定期間が必要であることから、市は実証実験の期間を最長で4カ月間延長する方針を示している。

市交通政策課の須藤文彦課長は、「既存の交通機関を活用した新しい公共交通網のモデルを構築するためにも、実験を成功させて割引制度の導入実現につなげたい」と語っていた。

公明が提案し推進

同市は、タクシーなどの交通事業者と協働した持続可能な地域公共交通の整備をめざし、16年3月に「水戸市公共交通基本計画」を策定。一方、国土交通省は同年4月に策定した「タクシー革新プラン2016」で、稼働率が低い時間帯での割引運賃導入などの方針を示していた。こうしたことから国交省と市、タクシー事業者が連携して実証実験を行うことになった。

茨城県ハイヤー・タクシー協会の出野清秀副会長は、「あまり利用されない時間帯に住民の”足”として使ってもらうのは有意義なので、使命感をもって取り組みたい」と話していた。

黒木市議は、10年12月の定例会で「タクシー事業者のシステム連絡網を使うことによって、設備投資せずに住民サービスを充実させることができる」として、タクシーを活用した移動手段の確保を提案。今月15日の定例会一般質問では、市から現在実施中の実証実験を延長する方針を引き出していた。

 

 

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2017年3月25日