これからの時代の「新しい社会保障政策」(月刊「公明」12月号)

公明党がこれからベーシック・サービスを進めていくにあたって、このたび出版された月刊「公明」12月号にとても重要なお二人の寄稿が掲載されました。一人は、井手英策先生との共著もある藤田孝典氏。もう一人は、井手英策先生の師である神野直彦先生です。

まずは藤田孝典氏の『これからの時代の「新しい社会保障政策」』と題した提言を紹介したいと思います。

この内容は、これからベーシック・サービスについて踏まえるべき重要な考え方を示したものです。

ベーシック・サービスとはその名の通り、住まい・医療・介護・教育・保育といった『人間が人間らしく生きていくために必要となる』もの、つまり生きるための「基礎」となるサービスを無償化(これを藤田氏は提言の中で『脱商品化』と呼んでいます)したり、現金給付を行うという政策です。

その『必要』をどう考えるのか。

つまり範囲と水準についての考え方が重要になります。これをしっかり議論しないと、サービスの名のもとに際限のない要求と、際限のないバラマキにも繋がってしまいかねません。

一方でこの『必要』も、時代によって変化するものです。

たとえば不妊治療。公明党が現在進めているこれへの保険適用も、これまで一部の人にとってのニーズだったものが、現在では少子化対策という社会政策も含めた多くの人のニーズとなっていることで推進しているわけです。つまり、ニーズというものはたえず変化するという認識が大切です。

そうしたことから、提言で藤田氏は『ベーシック・サービスの無償化、低負担化による「脱商品化」政策を進める際には、丁寧に市民生活を分析しなければならない』と述べています。

そのうえで藤田氏は、このベーシック・サービスとされるものの中に「通信」を挙げています。僕は、これは重要な指摘だと思います。

公明党がこれまで推進し、菅総理も政権の出発から掲げた携帯電話料金値下げは、家計負担の軽減として議論されています。たしかに低所得世帯ほど家計に占める携帯電話料金の割合は大きいのが事実です。(付け加えば、僕は日ごろいろんな方に接して、低所得世帯ほど格安SIMを使っていないのでは、という感想を持っています。)
ただこの議論について、僕は家計負担という面にとどまるべきではないと考えます。携帯電話は社会的に弱い立場にある方が、様々な支援に繋がるための重要なインフラであるという視点も重要だと思います。事情によっては、支援者がご家庭に訪問できない場合もあります。そうしたときに、携帯電話は支援者が当人と繋がるための唯一の糸になりますが、その糸が料金滞納によって切れてしまうと、支援との繋がりも切れてしまう。

…少し私感が入ってしまいましたが、つまりそのような時代による国民共通のニーズをどう捉えるか。藤田氏は今回の提言で『新しい生活保障政策であるベーシック・サービスの射程を定め、順次、脱商品化に取り組む姿勢を打ち出していただきたい』と期待を寄せています。

ベーシック・サービスの財源論と同じくらい重要なのが、このベーシック・ニーズの議論です。

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