不交付団体と実質収支比率

立川市では明日、市長選の投票日を迎えます。

私たち公明党立川市議団としては、現職の清水庄平市長を推薦しており、私も本日、JR立川駅北口で行われた打ち上げ遊説で応援演説をさせていただきました。

その際、私から訴えたことは、立川市の財政。
現在、立川市では清水市長のもと、基金という「貯金」を積み立てております。不交付団体という、国からの交付金が配分されない立川市の立場として、将来的にお金が必要になった場合の文字通りの「貯金」を、決して余裕のない財政のなかでも確実に積み立てているわけです。

対立する共産党の候補はそのような市政運営ではなく、もっと市民のためにお金を使うべきだ、という主張をしています。

今、この立川市で暮らしている市民に対してサービスを増やしていく、もっとお金を使うというのも一つの考えでしょう。しかし、本年をピークとして人口が減っていくという段階に入った立川市にあって、私たちの世代だけが厚い市民サービスを受けて、10年、20年、30年先のことは考えなくていい、なんてことが許されるはずはありません。私はそうした「今だけ良ければいい」という市政ではなく、しっかり次の世代に引き継いでいける立川市をつくるために、これまでの市政運営を継続していくべきである、そのために現職市長を応援していくということを訴えました。

この「立川市はもっと市民のためにお金を使うべきだ」という議論は、実はこれまでも市議会のなかで度々交わされてきました。

その根拠になってきたのが、自治体の財政について判断する基準の一つである「実質収支比率」の数値です。


 

実質収支比率・・・ちょっと難しい言葉ですが、説明します。

一般には次のような式で計算されます。

実質収支比率= (A)実質収支額/(B)標準財政規模 ×100(%)

計算式だけでもう受け付けなくなる方もいるかと思いますが、できるだけ簡単に説明しますので、少し辛抱してください。

 

(A)実質収支額

入ったお金(収入)から出たお金(支出)引いた額を「形式収支」といいます。しかしこれには、お金を払ってしまったけれど実施されるのは来年度になる、というものも含まれています。なので、その分を除いた額(つまり「形式収支」に来年度実施分を足すことになりますね)、これが「実質収支額」になります。収入から今年度に行われた分の支出を引いた額ですね。

(B)標準財政規模

これを算出する計算式もいちおう記します。

標準財政規模=標準税収入額等+普通交付税

「標準税収入額等」はどういう内容かなどと深追いすると泥沼にはまるので、こういう式があるんだ、というくらいの認識で十分だと思います。簡単に言うと「標準財政規模」とは、この地方で、このくらいの広さで、このくらいの人口がいる自治体は、一般的にこのくらいの収入だよね、という額です。

この(A)を(B)で割って100を掛けた数字が、実質収支比率となるわけです。

例えば、T市は今年度1,000円の収入があって、950円使いました。T市くらいの自治体だと、標準的には900円の収入がある計算になっています。・・・とします。これを計算すると、

実質収支額=1,000-950=50円  標準財政規模=900円  ⇒ 50÷900×100(%)=5.5%

ですね。

この場合の「5.5%」が、T市の今年度の実質収支比率ということになります。


 

自治体財政について書かれた多くの本では、この実質収支比率は3~5%が望ましい、と書かれています。しかし、実はこの望ましいとされる数字について、その根拠を探そうとしても、なかなか見つかりません。もしかしたらどこかに示されているのかもしれませんが、私が探す限りではこの根拠は見当たりません。

そこで私が推測する根拠はこうです。

これはその前提として、交付団体、つまり国からの交付金を受けている団体(自治体)に対する「望ましい」比率であろう、と考えます。標準財政規模の計算式にも「普通交付税」が入っていますしね。

交付団体になるのか不交付団体になるのか、というのもある一定の計算式があります。これもここでは詳しくは述べませんが、その計算上、独自の収入だけで足りないとされる自治体に、足りない分を国が支給するのが交付金。そして、その交付金を受けているのが交付団体というわけです。

もともと足りないからこそ支給されるはずの交付金ですから、それが大きく余ってしまうと、その算出根拠が疑われることになる。さりとて、使いすぎで足りなくなってしまうのでは、地方財政を危うくしてしまう。つまるところ、3~5%くらい残しておくようにすることが望ましいのではないか、という「だいたいそんなところ」というような感じでこの基準が示されてきたのではないか、というのが私の推論です。

立川市では近年、この実質収支比率は5~7%くらいで推移しています。一般的な財政の教科書では、この値は3~5%が望ましい、と書いてあることは先程述べました。望ましい比率以上にお金が残っていることは、財政の教科書では、市民サービスに回すべきお金を使っていない、ということになるわけです。つまり、これが今回の市長選で共産党推薦の候補が主張する、もっとお金をつかうべきだ、という主張の根拠になっていると思われます。

立川市が交付団体であるなら、この主張も当然一理あるでしょう。しかし、不交付団体である立川市としては、経済状況の変化で収入が減少したとしても、教育・福祉をしっかり継続していくための蓄え(基金)は、平時からしっかり積み立てていかなくてはならない。市財政も家計も考え方は一緒です。

そうであるとするならば、不交付団体という国からの交付金を頼りにしていない自治体では、この実質収支比率については別の考え方があって然るべきではないか。大きく余らないけれども足りないわけではない、というような基準に縛られてはいけない。将来的にも財政が健全でいられるために、その自治体独自の基準を持つべきではないか、ということを、私は前回6月の定例会のなかで主張しました。

私たち議員にとっても、市長に新たな市民サービスを提案し、それが目に見える形で実現すれば、市民にアピールしやすいわけです。しかし、人口減少・少子高齢化という社会にあって、これからの政治は何をやるか、ということ以上に、何をやらないか、ということを選択していかなくてはなりません。そのなかで、閉塞感に陥ることなく市政運営を行っていくためには、財政についてしっかりとした理念と基準を持って挑んでいかなくてはならないと考えます。

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