米沢市中小企業振興条例について (2016/07/27)

【日時】 平成28年7月27日(水)13:00~14:30

【訪問先】 米沢市役所(山形県米沢市金池5-2-25)

【視察者】 公明党立川市議団(高口靖彦、門倉正子、瀬順弘、大沢純一)

【対応】 米沢市産業部商工課・商業振興主査 菅原豊子 氏

 

【報告】

米沢市中小企業振興条例の概要にも記されているとおり、同市の中小企業は市内企業の99.8%(4,760事業所)を占めている。大企業とされるのは10社ほどであり、それ以外が中小企業に分類されるという状況だという。

回復の兆しがあるとはいえ、長期にわたる景気の低迷のなかで中小企業をとりまく環境は大変厳しい現実が続いている。中小企業は地域経済の中核であり、雇用を維持し市民生活を向上させるためには、社会全体でこれを支援していくことが必要であると判断し、米沢市ではそのための「中小企業振興条例」を制定。平成27年4月より施行している。

この条例については以前に議会でも議論があったという経緯はあるが、今回の制定にあたっては行政が主導し策定されたとのことである。平成26年7月に最初の検討委員会が開かれ、まず何のためにつくるのか、というところから始められたそうである。その後、全5回の議論が重ねられた。

この検討委員会では、条例案とともに「米沢市産業振興アクションプラン(仮称・案)」が議論された。このアクションプランは中小企業振興条例をもとにした振興推進計画である。視察した時点ではようやくたたき台ができた段階で、なんとか28年度中に策定できるよう作業を進めているということであった。

このアクションプランの策定と平行して、米沢市では条例を単なる理念で終わらせないことを強く意識している。

施行後の周知活動としては、講演会の実施のほか、出前講座などでもPRに取り組んでいる。とくに大学生に対して中小企業の役割を伝え、市内企業に関心を向けるという努力もしているとのことであった。

立川市議会として過去にこの中小企業振興条例について議論された経緯があり、ここでそのなかでの大きな論点となった点について聞いてみた。それは市内の産業としては当然、中小企業として括られる工業、商業のほかに農業などの分野もあるわけであり、あえて工業、商業分野の振興をすすめることを謳う条例をつくるのはどういった見解からなのか、というものである。

現在、米沢市は「米沢市ABC(Aはapple(舘山りんご)、Bはbeef(米沢牛)、Cはcarp(米沢鯉))」ということで市の特産品をアピールしている。こういった農業分野の活性化については当然これからも注力しなくてはならないはずだ。

担当者からは、そこは当然考えているが、一方で中小企業の振興というのは別段で考えなくてはならないものであり、中小企業に行政が力を入れていくということを特に示すものとして、今回この条例を制定した、という回答があった。

 

【所感】

本年4月1日時点で83,175人という米沢市の人口であるが、昨年同月よりも2,000人程減少している。そのような現状でどう市内の活性化をはかるか。

現在、東北中央自動車道の建設が進んでおり、平成29年中にも開通予定である。これが完成すると、米沢市と福島市の所要時間が20分短縮されることになる。今後、地域の中核的な都市である福島市との人的・物的交流がさらに多くなると見込まれる米沢市としては、中小企業にとって魅力的なまちになることで、人口減少社会にあっての生き残りをかけることになろう。

そういった現状下で策定されたこの条例であるが、その効果については今後の経過を注視していきたい。

また視察のなかで、米沢市中小企業振興条例のなかで示されていた市内業者の製品を利用することを推進するというところに強く関心をもった。(米沢市中小企業振興条例第4条第4項)

実はこの条文自体は、今回の条例ではじめて示されたわけでなく、これまでも別な形であったものだという。それを今回の条例制定にあたってここでも明文化したものだ。

市内事業者を市民、行政全体で育てていかなくてはならない、という姿勢を、条例の制定を通じて米沢市から感じ取ることができた。これは本市立川市の行政としては不十分であると私が感じていることでもある。

今後、本市としても企業振興を進めていくにあたっては、条例という形がいいかどうかを含めて、今後さらに検討していかなくてはならないであろう。しかし、市内業者を育てていくということをさらに強く掲げていかなくてはならないことは間違いない。

今回の視察は、法人税収入に大きく依存する本市にとって、どうしたら企業から選ばれる市になるか。そこに行政として、また政治としてどう「攻めて」いかなければならないか、考える大きな契機になった。今後も様々な地域の取り組みを研究しながら、立川市が企業にとっても魅力ある都市になるよう取り組んでいきたい。

 

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