福井県あわら市 小・中学生の学力向上の取り組みについて(2018/08/07)

【日時】 平成30年8月7日(火)13:30~15:30
【訪問先】 あわら市役所(福井県あわら市市姫三丁目1番1号)
【視察者】 公明党立川市議団(高口靖彦、山本美智代、門倉正子、瀬順弘、大沢純一)
【目的】 小・中学生の学力向上の取り組みについて
【対応】 あわら市教育委員会教育総務課教育総務グループ教育審議監(参事) 荒川誠 氏/同課長 房野信彦 氏

【報告】

福井県は学力水準が高いことで知られる。先日の報道でも、今年度に実施された全国学力・学習状況調査の結果について県教育委員会が『全教科で全国トップクラスを維持した』(2018年8月1日付朝日新聞デジタル)と公表している。
県下で精力的に学力向上に取り組んでいるあわら市を視察した。

全国的な少子化はあわら市でも顕著であり、平成27年度までは10校あった小学校も、28年度に2校、29年度に1校が休校となり、現在は小学校7校、中学校2校という体制になっている。同市では現在、中学校は平成22年度から、小学校は平成26年度から2学期制を導入している。立川市でも過去に導入され、その後3学期制に戻された経緯があるが、2学期制についてはあわら市では有効に機能しているということであった。

本年度(30年度)の全国学力・学習状況調査において福井県は中学3年生の数学、理科の成績が「11年連続上位維持」(8月1日付福井新聞)とされる反面、書く力や伝える力が課題とされた。高学力が維持されているなかにあって、そうした課題のもとに、あわら市ではさらなる学力向上のために多くの取り組みを実施している。

そのうちの一つが読解力の向上である。学校ごとに、たとえば読書目標を月10冊などと設定し、読書を奨励している。担当者からは「読解力は読書しかない」との見解が聞かれた。また、百人一首や論語などで古典学習にも力を入れている。

また、「福井型18年教育」として県が主体となり“生まれてから高校卒業まで”それぞれの学びの連携を強く意識した取り組みも行っている。これは保幼小の連携、小中高の連携であるが、夏休みの間に小学校教員がこども園に入ることや、こども園の保育内容についても小学校の授業を意識した取り組みを行っているという。

その他多岐に渡る学力向上の取り組みのなかでも、担当者から「これだけは参考にして欲しい」と言われたのが中学校における授業の「タテ持ち」であった。

1人の教師は1つの学年しか受け持たない(ヨコ持ち)のが通常であろう。これを、たとえばある数学の教師が1年生から3年生までの1組と受け持ち、もう一人の数学の教師が同じく1年生から3年生までの2組を受け持つ、というように、学年を縦断する形で授業を受け持つことを「タテ持ち」と読んでいる。こうすることで、同じ学年でもそれぞれの組で授業内容が異なることから、教師の間で切磋琢磨し競い合いが生まれるということであった。福井県では昭和の時代からこれが行われているということで、他では聞かれない福井県の教育の“普通”が紹介された。

また、「宿題の量が多い」のも福井県の特徴であるという。そもそも塾があまりなく、3世代が珍しくない家庭環境のもとで祖父・祖母が孫の宿題をみるというのが、これも“普通”であり、そうした環境のもとで、一般に塾に費やすとみられる時間(おおよそ2時間)を充てるだけの量の宿題が毎日出されるということであった。「先生が家庭教育にも責任を持つ」という考えを持っているという。

ここで当然の疑問として、教師の負担が大変大きいのではないか、ということがあがる。

「タテ持ち」の授業を行えば、教師は3学年分の授業を行う必要があり、一般的なヨコ持ちよりも必然的に準備に時間を要する。また、宿題を多く出すということは、その採点にも時間が掛かるということでもある。

教師の近年増大する仕事量をどう減少させていくか、が教育の大きな課題の一つとなっている中で、先のような取り組みについて教師から不満がでてもおかしくない。しかしそうした声はないという。その理由をたずねたところ、福井県民の「勤勉さ」にあるのではないか、ということであった。さらに、教員同士で時折行う懇親会の参加率がとても高く、そうした場でのコミュニケーションの深さも教員の仕事に対するモチベーションを高め、エンカレッジに繋がるのではないかとも分析している。

最後に、あわら市の今後の方針について聞いた。

平成29年度に策定されたあわら市の第2次教育振興基本計画では、その中心に「総合的な学力」と示されている。学力とともに、道徳心と体力の向上を備えることを「総合的」と表現しているが、「知・徳・体」を偏りなく育んでいくことが大事だと認識し、それが生きる力をつけていくことになるとしている。

そうした計画のもと、今後は“道徳教育”に力を入れていくことで、判断力を育てたいということが挙げられた。とくに、児童・生徒が自分たちで考えることを主体として、道徳の教科書を「自分たちでつくる」ことに取り組んでいるという。

さらに“英語教育”についても言及があった。あわら市の中学3学年の英検3級取得率は56.8%に上ることが紹介され、これは全国1位であるという。英検には3~4年前から力を入れてきたということで、これは県立高校受験で加点にもしている、ということであった。この英検については教師も積極的に取り組んでおり、高校英語教師の9割弱、中学校英語教師の6割弱が準1級を取得しており、この割合も全国でトップであることが紹介された。

【所感】

「普通のことを普通にやってきた。ところがそれを外(県外の方)から見ると『すごい』と言われる。」説明にあたった荒川氏から冒頭にこう述べられたが、あわら市をはじめ福井県で行われている学力向上の取り組みは、県民にとって特別なことではなく、日常の取り組みの積み重ねが、結果として学力を向上させているということであった。そしてそれは「勤勉」という県民性が大きく寄与しているであろうことが、担当者から繰り返し言及された。

福井県で育ち、福井大学の教育学部を卒業して県内の学校に赴任する教員が多く(とくに女性の割合が高い)、勤勉という県民性が薄まることなく教育現場に循環しているということで、他県から来た教師にもそういった気風が浸透しているということも聞いた。

しかし、学力向上の要因を「県民性」とされてしまうと、普遍的な取り組みとして展開が難しい。ここで担当者に県民性のウィークポイントも聞いた。少し考えたあとに「アピールが弱いことかな」と言われた(お米の産地である福井県は、もともとコシヒカリの発祥地だそうだが、今では新潟県の方が知名度が強いことを引き合いに、県民のアピール力の弱さを指摘していた)が、当然のことながら、福井県の県民性として他県より優れているところばかりでないはずである。

福井県の学力向上は、そうした自分たちの長所を活かした方法を掘り当てられたことに要諦があるのではないだろうか。

様々な施策を参考にしつつ、立川市民の強み、長所を活かす教育方法をこれからも探っていく必要性を強く実感した。

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