長野県大町市での「地域包括ケアシステム」の取り組み(2014/11/06)

 

【日時】平成26年11月6日(木)13:00~14:30

【訪問先】大町市役所(長野県大町市大町3887)

【対応】大町市民生部福祉課地域包括支援センター・所長 大塚裕明 氏

 

【報告】

大町市は本市と姉妹都市として職員交流を行っており、相互の情報交換は今後の施策立案、運用に大変有用であることから、今後早急な構築が求められる「地域包括ケアシステム」の取り組みについて視察した。

長寿県である長野県は、2013年に厚生労働省より発表された国民の平均寿命でも、男女ともに全国一位であると発表されている(男性80.88歳、女性87.18歳)。それだけに高齢化対策は他県にも増して大きな課題であるが、その中でも訪問した大町市は県平均より高い率で推移していくことが国立社会保障・人口問題研究所の人口推計でも示されている。現在でも高齢化率は32.91%と県下でもトップクラスとされている(立川市は22.50%)。

そうした高齢化対策として地域包括ケアシステムの構築を考えるにあたり、大町市では「介護予防1/100プロジェクト」を掲げ、推進している。

高齢化が進むといっても、当然ながら高齢者になったからといって全員が介護を必要とするわけではない。いわゆる団塊の世代が75才を迎える2025年が、高齢化対策では一つのピークとされているが、大町市ではその2025年に向けて、要介護認定を受ける後期高齢者の割合を2013年度比で△1%、つまり△1/100にすることを目標としている。そうすることによって、推計では2013年度と同程度の人数になるという。

また、大町市として介護が必要となった原因を分析したところ、認知症(1位)、脳血管疾患(2位)、膝や腰の病気(3位)といった予防事業で減少できる病気が多いことも判明したことから、介護予防に力を入れている。つまり、介護予防で要介護者を増やさないという計画のなかで、地域包括ケアシステムの構築を目指している。これは地方財政がどこも緊迫している状況で、オーバースペックなシステムをつくらない意思であるとも言える。

この△1/100のための取り組みとして大町市では、自身が介護支援を必要にならないようにするための体操(「おおっ!マーチde体操」)や、この体操を補助する「たいそうサポーター」育成。また、要介護の原因1位である認知症を地域で支えるものとしての「認知症サポーター」の育成などを行っている。この辺りは他の行政と比較して、取り立てて目立ったものではないが、大町市は、市民一人一人がこれに取り組みときのハードルを極力低くする努力をしている。

例えば認知症サポーターの育成などは、1度講習を受けたからといって知識が定着するものではない。そのためにフォローアップの勉強会を行っているが、その際に、毎回参加することを強要するようなことはない。むしろ、「最初と最後だけしか勉強会に参加できなかったという方がおりますが、そういう方はかえって嬉しい」という話が大塚所長からあった。当然、毎回参加できればその方がいいのだが、「最後に参加してくれた、ということは、その参加できなかった間に、おそらくずっと認知症のことを気に留めていてくれた、ということ。そういう意識が広がってくれることが大切」(大塚所長)だというのが、この大町市の取り組みについての考え方である。

「1/100プロジェクト」という名称が示すとおり、市民が実感として手の届くゴール設定をするということ。この視点は大変重要である。

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