愛知・半田市 マイレポはんだ (2017/05/22) 

【日時】 平成29年5月22日(月)13:00~15:00
【訪問先】 半田市役所(愛知県半田市東洋町2—1)
【視察者】 公明党立川市議団(高口靖彦、山本美智代、瀬順弘、大沢純一)
【目的】 「マイレポはんだ」事業について
【対応】 半田市企画部市民協働課・課長 加藤明弘 氏、半田市企画部市民協働課・主査 山田隆康 氏、半田市企画部企画課・広報情報担当 岩田竜一 氏

【報告】
半田市ではスマートフォンアプリ「FixMyStreetJapan(フィックスマイストリート・ジャパン)を活用した市民協働の取り組みである「マイレポはんだ」という事業を行なっている。
これは市内の道路の陥没や公共施設の破損などをスマートフォンアプリを使って市民に通報してもらい、行政が修繕などの対応を行うというもの。
同様の取り組みは、別府市や郡山市など全国7市で行われているが、そのなかでも先駆けて取り組みを始めた半田市で担当者から話を聞いた。

 

平成26年度10月から運用開始された事業であるが、最初の実証実験は平成25年7月から8月にかけて行われている。
実証実験に至ったきっかけは、その直前の4月に放送されたNHK番組で千葉市でのFixMyStreetJapanを使用した取り組みが紹介され、それを市職員が見たことであったという。
それまでも行政としては1年間で市内全域を一周する道路パトロールを実施していたが、言い換えれば一地点を年一回しか見回れないことに課題を感じていた。この問題意識を強く感じていた職員の一人(30代職員だったという)が同番組の放送で千葉市の取り組みを見たことから庁内で実証実験が開始された。
最初の実証実験は職員だけで行われた。職員が対応可能なものであるのか、使えるアプリなのかといった角度から検証をし、翌26年1月からは市民の参加を得て市内全域での実証実験に入った。そのような経過を経て26年10月から本格運用されている。

このFixMyStreetJapanというアプリは、市民がスマートフォンで撮影した写真とGPSを使った位置情報とともに破損の状況などのコメントを送信すると、アプリの地図上にそれが表示されるというものである。
行政担当者はそれを見ることで、現地に赴くことなく状況が把握できるだけでなく、投稿を確認したこと、さらに問題に対応したことを市民に(相談した市民だけでなく広く市民に対して)知らせることができる。つまり行政対応の透明化、いわゆる見える化に繋がるものである。さらに市民にとっては、自分の声(意見)が行政に届いているという実感にもなり、行政に対する参画意識も高まる。また、多くの市民の目で市内をチェックしてもらうことで、なかなか行き届かない課題や問題の掌握ができることが期待できる。

 

 

また、行政窓口が市民に対応できる時間は日中が主であり、夜間に帰宅する市民が行政に相談できる機会はごく少ないのがこれまでの常であった。しかし、こうしたアプリを経由することで時間帯を気にすることなく相談できることも、市民にとっては大きいメリットであるが、これは市民ばかりではないという。
半田市でも休日対応ということで職員が市役所に待機しているが、これまで市民から道路の補修についての相談があっても、電話では状況が伝わりにくいこともあり、緊急性が高い案件であるのかどうかは、実際に現場を見てみないと分からないことも少なくない。そのため、職員が休日に急遽現場に行くこともあったが、このシステムでは画像で判断することができるために無駄な業務を減らすことができる。

 

むろんこれまでもそうした要望、相談は自治区(自治会)からの住民要望や市長への手紙、あるいは電話やメールといった様々な手段で行政へ届いてきた。その上でこうしたシステムを始めるのは、市民の声を聞く手段を増やすという位置づけと考えており、これまでの既存の手段が使いやすい市民はそちらを使ってもらい、このシステムが使いやすいと思う市民に使ってもらうという考えで運用している。実際にこの事業が始まったからといって、これまでの手段による相談が減ったということはなく、これまでの手段では行政と繋がりを持たなかった層がこれを利用していると分析している。(ちなみにこのシステムを利用するにあたっては、市民はメールアドレスとニックネーム(本名である必要なない)を登録するだけであるため、利用者の属性を知ることはできない。市民の声から判断すると、おそらく男性の方が多いのではというのが担当者の感想であった。)

では実際にどれほどの投稿がされるのか。3カ月の実証段階を経て本運用を開始した半田市では、報道メディアに取り上げられた実証段階で1日平均1.07件、本運用の約2年半の間では1日平均0.61件という状況である。夏場に相談件数が増加し、冬場に減少するという傾向があるが、このシステムを導入したことでこれまでの業務の負担になっているということはないということであった。むしろ業務にあたり初動の効率化が図れることの効果の方が大きいという話があった。

また、運用にあたっては不適切な投稿への対応も懸念される。半田市ではこれについて当然ガイドラインを持っている。いわゆるいたずらに類する不適切な投稿(誹謗中傷、差別、プライバシーの侵害など)について、市で非表示の対応をとることになっているが、これまでそういった投稿は発生していないということであった。

ただ、相談対象の背後などに写ってしまっている自動車のナンバープレートというような個人が特定される写真が投稿されることは度々発生しており、その際には画像の加工をおこなっているそうである。

将来的に、不適切な投稿が頻発することで通常業務に支障をきたすことが起きた場合には運用を中止するということも予め取り決めている。

半田市での現在の課題としては、一つに利用者が頭打ちなことが挙げられる。今後は半田市でも人口減少を迎えるなかで、本システムには多くの市民の参加が望まれる。これは業務効率化とともに、後述するが市民協働、市民参画ということからもこうしたシステムへの参加を求めているが、市民の認知度がなかなか上がらないということが課題となっている。現在は高齢者のパソコン教室などの際にこのシステムを説明して、市民への周知に努めている。

また別な課題としては、関係機関との連携がある。

市民からの課題・問題について、対応を「見える化」することがこのシステムの大きな意義の一つであるが、市で解決できない課題、たとえば県や国の管轄である問題については、市としては関係機関に連絡をする、という対応に留まらざるを得ない。

このシステムの活用では、投稿された問題の約36%が7日間以内で解決をしている。しかし、そのほとんどが市の問題であり、管轄外の問題になると解決できたかどうかが不明確で、市民に対してなかなか結果を明示できないという。

そうした課題はあるが、半田市でこの事業を中止するという考えはない。市長がこうしたオープンガバメントというものに積極的に取り組んでいることが大きな理由だ。

オープンガバメント、行政の見える化をなんのために取り組むのかと言えば、課題・問題を市民と行政が共有し、共に解決に向かう基盤をつくるためである。その理念のもとに、マイレポはんだを通じて市民の自発的に問題解決に取り組む仕組みをつくることを半田市は目指している。

(資料は半田市企画部企画課より提供)

 

 

 

 

【所感】
これまで立川市議会において何度かこのシステムの導入を求めてきたが、今回視察に伺ったことで、あらためて必要性を強く認識した。
市民としては、行政対応の透明化、見える化になり、自分の投稿で街が改善されるという実感、地域への貢献が実感できる。一方、行政の側も、多くの市民から情報提供を受けることで、なかなか目の行き届かない課題・問題が把握できることや現地確認の初動の効率化など、業務改善に繋がるものである。
また、同システムは災害時対応も可能なものであるが、災害時に位置情報と画像を投稿できるシステムを用意しておくことは、とても重要である。こうしたシステムの活用に日常から慣れることは、災害時に大きな効力を発揮する。

地域の要望、対応については、私たち議員を通じて行政に依頼をする、ということも多い。そうした市民の声を伝えるというのも議員の役割ではあるが、本質的には議員を通さなくても市民の声が行政に届く仕組みをつくることこそが、私たち議員の役割だと思っている。今後、行政に対して、あらゆる機会を通じで導入を求めていきたい。

 

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2017年6月13日