柏の葉スマートシティ(2017/04/13)

 

【日時】 平成29年4月13日(木)13:30~15:00
【視察先】 柏の葉スマートシティ(千葉県柏市若柴178)
【視察者】 大沢純一
【目的】 まちづくりについての調査研究
【対応】 三井不動産株式会社 柏の葉街づくり推進部事業グループ 濱記代子 氏

【報告】

IT技術で街全体の電力供給を調整するスマートグリッドを日本で最初に実用化した「柏の葉スマートシティ」を視察。

ここでの電力は、平時には商業施設「ららぽーと柏の葉」の他、街区オフィスやホテルに供給されるが、災害時には集合住宅街区(一番街977戸、二番街880戸)の共用設備にも供給を行えるようになっている。

街全体の公共空間のデザイン及びマネジメントは地域産官学で構成されたUDCKという組織が担っている。公道においても柏市とともにUDCKが管理しているため、ベンチや樹木の設置なども柔軟に行うことができる。

ゴルフ場跡地を含む273万平方メートルという広大な土地を活用したこのプロジェクトは三井不動産によって進められているが、計画的なまちづくりは洗礼された「次世代の環境」という印象で、「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」というまちづくりのコンセプトを強く感じる。

 

たとえば「新産業創造」ということでは、コワーキングスペースから専用オフィスまでが用意された「31VENTURES KOIL」というスペースが、都心と比べて手頃な料金で利用できる。ここではその環境から異業種交流が日常的に行われているということである。それに加え、3Dプリンターやレーザーカッターなどが自由に使える「KOILファクトリー」という施設も用意されており、発想をすぐに形にできる環境も整えられている。

 

 

 

また、事業が拡大していったときにコワーキングスペースから移るための個室オフィスも用意されており、将来のステップアップを目指す動機づけにもなっているようであった。

 

 

 

 

 

 

 

さらに「健康長寿都市」としての環境も興味深いものがあった。施設内で健康・医療施設となっているワンフロアがあり、その中心が「まちの健康研究所 あ・し・た」という健康・医療の情報発信や、利用者の健康管理を無料で行う施設である。ここでは体組成計での無料計測なども行えるが、働いている人は地域のボランティアだそうだ。

 

 

 

 

同フロアでは子どもが怖がることのないように工夫を凝らした歯科クリニックも目を引いた。

 

 

 

 

 

【所感】

この施設の中核であるスマートグリッドについては、大企業のプロジェクトというような位置づけでない限り、一自治体での実行は困難であると思われるが、それ以外のまちづくりという面では参考になった。

どのように人を集めるかというのが地方創生であるが、新しい仕事をどう生み出し、継続できるようにするかということが中心のひとつだ。今回の視察でそういった環境、基盤を整えていくことが人を集めることに大きく繋がっていくことを強く感じた。

さらに、集まった人を定住に繋げていくのは教育と健康がキーワードとなる。そういった意味では理想的なコンパクトシティが、この柏の葉ではないだろうか。

今後の取り組みを注視したい。

以上

 

2017年4月13日

全国災害ボランティア議員連盟 平成28年度研修会 (2017/02/01~02)

【日程】2017(平成29)年2月1日(水)~2月2日(木)
【研修先】大島町役場(東京都大島町元町1-1-14)
【研修目的】全国災害ボランティア議員連盟 平成28年度研修会
【研修者名】大沢純一

【詳細報告】
全国災害ボランティア議員連盟 平成28年度研修会
「災害ボランディア活動の実際」
講師:社会福祉法人大島社会福祉協議会 大島社協ボランディアセンター・副センター長 鈴木祐介 氏

研修会では大島社会福祉協議会ボランディアセンター副センター長の鈴木祐介氏より、平成25年に大島町でおきた台風26号による土砂災害の際のボランディアセンターの活動についてきいた。

平成25年10月11日から16日に発生した台風26号で、大島町では15日夜から16日明け方にかけて、1時間雨量122.5ミリ、とくに23時から翌5時までの6時間では549.5ミリという観測史上最大の降水量。それにより16日2:30頃に大島町西部で大規模な土砂災害が発生。死者36名、行方不明者3名、居住家屋203棟が損壊を受ける大被害となった。

こうした状況を受け、発生から2日後となる18日正午に災害ボランディアセンターが大島社会福祉協議会を主体として設置された。
社会福祉協議会としてはこれまで、災害にあたっては三原山噴火のときのように、自力では避難できない「要支援者」にあたる住民の避難を中心におこなっており、当初はボランディアセンターの設置は当初予定していなかったという。島内外の方から「いつボランディアセンターを開設するのか」という問い合わせが多くなり、開設に至ったという経緯であった。

ボランディアセンターが開設された期間は平成25年10月18日から26年3月31日のおよそ半年で、島外から4,700名ほど、島内からも2,500名ほどが復旧活動や被災者支援などを行った。(島内の人たちが全体の3割以上も参加しており、地元の人たちがそれだけ多くたずさわるのは珍しいとのことだった。)約半年の開設期間であったが、ボランディア活動としては最初の1カ月で復旧、支援のメドがついたという。

災害ボランディアセンターの運営にあたっては、とくに「誰のため」「何のため」を常に意識したということであった。関係者の共通認識をもって、支援の方向性が逸れないように常に確認し合うことが重要で、さらに「どこまで」といった活動範囲の問題、「いつまで」といったニーズの問題も意識して運営を行ったとの報告があった。

特にニーズの把握については、復旧支援にあたっている諸団体からのニーズ把握とともに被災者一人一人からの相談を重視した。これは同時に、被災者に対してボランディアセンターの認知度、周知を広めることにもなった。また、そのやり方も、被災者へチラシやかわら版を持参しながら、雑談を含めていろいろな話しを「聞く」ということを意識した。これはそのまま被災者に寄り添うことに繋がった。

また、災害のときには多くの情報が交錯することになり、誤った情報が支援活動に支障をきたす場合も少なくないことから、ボランディアセンターとしてSNSを中心とした情報提供を通じて、ボランディアセンター自体に対しても関心を集め、いわゆる味方づくりを意識したという。同時に情報公開にも努めた。

こうした当時の活動をうけて、今後の災害ボランディアセンターについての課題として、特に運営資金の対応について話があった。

災害ボランディアセンターを運営するにあたり、いわゆる「ヒト・モノ・カネ」が必要だが、大島町では平成25年当時、このすべてがなかったという。特に資金(カネ)では4~5カ月で約1,000万円を要したが、社会福祉法が改正されて社会福祉法人は余剰資金を持ってはいけないというとになった。これをどのような形で今後工面していくのか。この点が大きな課題として提示された。

研修会ではその後、平成25年台風26号土砂災害現場を視察し、さらに三原山溶岩流堤、溶岩導流堤現場を見学。大島町役場の担当者から説明を受け、当時の被害の大きさを実感した。さらに伊豆大島火山博物館では日本だけでなく世界各地の噴火活動の展示とともに、昭和61年の三原山噴火における全島民避難の映像などを視聴した。

【所感】

ボランディアセンター運営についての課題として、一つは資金面については運営に多額を要すること。さらにその資金が大島町では当初から確保(予算)されていなかったことが研修で強調されていた。この点は参加者全員が、それぞれの自治体で確認が必要との認識で一致した。

また、災害ボランディアセンターを立ち上げることは、多くの自治体の地域防災計画で定められているが、一方でこれは、法制度化されている組織ではないという指摘も、研修の中で示された。

こうした災害時の制度的な不備というのは、机上ではなかなか見つけにくいことであろう。この議員連盟には今回初めての参加であったが、実際に現場で対応した経験と知見が大切であるということをあらためて実感できた研修であった。

<関連>災害ボランティア議連が研修会(2017年2月22日付 公明新聞7面)

呉市データヘルス計画について(2017/01/24)

【日時】2017(平成29)年1月24日(火)13:00〜15:00
【視察先】呉市役所(広島県呉市中央4丁目1–6)
【視察目的】データヘルス計画について
【視察者】公明党立川市議団(高口靖彦、門倉正子、瀬順弘、大沢純一、)
【対応】呉市福祉保健部保健年金課長補佐 兼 国保事業GL 大下佳弘 氏


【報告】

立川市では平成23年3月にデータヘルス計画を策定した。今回の計画は実施期間を昨年度(平成28年度)から本年度(29年度)までの2カ年としており、その状況を踏まえた上で、来年度以降の計画を進めていくことになる。

本年度で最初の区切りを迎えるにあたり、このデータヘルス計画発祥の地である呉市での取り組みを視察した。

データヘルス計画とは、医療機関で電子カルテに入力されたレセプトデータを分析し、市民がどのような病気に罹っているかということや、受診の状況、さらには薬をもらいすぎていないか、といったことを国民健康保険の保険者として市が把握して、市民の病気の重篤化や慢性化を防ぐことを目的としている。さらにその過程では、投薬状況を把握することで過剰な服薬や飲み合わせが禁止されている薬を服薬していないか、といった管理も行なっている。病状の重篤化、慢性化を防ぐことで医療費削減に繋がっていくため、増大する社会保障費を抑えられることから、国は全国の市町村にこの計画策定を求めており(注)、立川市も平成27年度末に策定した。

(注)「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)においては、「すべての健康保険組合に対し、レセプト等のデータ分析、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」の作成・公表、事業実施、評価等の取組みを求めるとともに、市町村国保が同様の取組を行うことを推進する。」としている。(立川市国民健康保険データヘルス計画より)

呉市の医療データを分析して重篤化・慢性化を防ぎ、医療費を抑制する取り組みは「呉モデル」として国が推進する事業となった。そもそも呉市でこの事業が開始された背景には、全国平均よりも医療費が高いという課題があった。

造船業を基幹産業として昭和18年に40万人まで増えた人口は、昭和50年には24万人にまで減少した。その後、平成17年「平成の大合併」で1市8町が合併したが、毎年1%ずつ減少していく人口は、本年23万人を切るという状況にある。その中で、高齢化率は33.5%と、人口15万人以上の同規模の自治体で第1位である。

呉市の医療環境として特徴的なのは、400床以上の総合病院が3つあり、人口に対して病院・病床数が多いということである。医療機関が身近にあることは、市民にとって安心である一方、気軽に受診できることが一人当たり医療費の増加に繋がっているのではないか、という懸念が以前より持たれていたようだ。
また、市の国民健康保険加入者は5万人弱だが、そのうちの半数以上(52%)が高齢者(65才〜74才)であり年金生活者が多く占めるという、低所得層が多い構成となっている。

国民健康保険の一人当たり医療費の推移としては、全国平均や広島県内の平均費用が伸びているなかで、呉市も過去5年間の推移として右肩上がりという現状ではある。しかし近年では、呉市の「高齢者」医療費は県平均より下回っている状況が出始めているという。市全体の医療費が増えているのは、若年者の医療費が原因であり、これは同市の精神病院に他県からも入院・転院してくる精神疾患患者が増えているというのが主な理由とのことであった。周辺に精神病院が少ない現状では不可避なことであり、こうした事情を除けばデータヘルス計画として医療費の適正化に努めてきた成果があらわれていると推測される。

先述のとおり、データヘルス計画はレセプトデータを分析することで医療費の無駄を削減することが中心の一つであるが、短期にその効果を求めることができるものとして、被保険者へのジェネリック医薬品の使用促進がある。呉市では対象者へ2ヶ月に1度通知を発送し、年間医療費を約2億3,900万円削減している(平成27年度)。尚、立川市でも同様の事業を行っており、年間約1,670万円の削減効果が出ている(平成26年度)。自治体規模の違いを考慮しても削減効果の金額が大きく違っているが、呉市が自治体として全国初の試みとしてジェネリック医薬品促進通知を開始したのは平成20年であった。削減額の大きさは呉市が取り組んできた7年間で市民の認識が広まったことにあろう。立川市としても今後の継続的な取り組みによってさらなる削減が期待できると考える。このジェネリックの差額通知事業については、行政と医師会の連携の強さによって推進できているということも担当者より伝えられた。

多少脇へ逸れるが、国民健康保険料を滞納した市民に対して呉市では、督促に応じない場合は国民健康保険で債権回収の専門部署をつくり、差し押さえもしている。医療費の削減に努めるとともに、そうした収入の面についても積極的な行動をとっており、平成20年に策定した財政運営健全化プログラムのもとで国民健康保険会計に対して一般会計からの補填は行なっていないそうである。

さらに生活習慣病の予防対策として、特定健康診査及び特定保健指導の実施率向上の取り組みについてもきいた。
呉市で平成20年より行なっている特定健診は現在、課税世帯で1人1000円の自己負担で実施している。これを来年度から無料化にするということであった。さらには受診機会を休日にも行い、受診場所の追加や時間帯も拡大するなど機会を増やしている。しかし現実にはなかなか受信率が上がっていないということであった(開始当時20%だったのが近年は25%)。立川市の受信率は34%程度であるが、じつは呉市よりも東京圏域の方が概ね高いそうである。これについては担当者が「逆に秘訣を聞きたい」と漏らされていたが、どこも得策といったものはないのが実情のようである。

ただ、その中で特定健康診査の受診者をどうカウントするか、ということもあがった。

ある病気で治療中の方が、あらためて健康診査を受けるということは実際にはほとんどないのではないか。そうであれば、治療中のデータのなかに特定健診のデータにあてはまれるものがあれば、その人については特定健診を受けているとカウントしても問題ないはずで、そういった実質的な受診率というものも考えていきたいとの話しがあった。

また、特定健康診査異常値放置に対する受診勧奨についてもきいた。

過去に受診歴がある方で最近は受診が止まっているという人が、呉市では本年度400件ほどあり、2つ以上の疾患がある人については訪問をし、それ以外は文書で通知を行っている。訪問をした結果、半数以上が受診を再開している。

さらに「受診行動の適正化」について、立川市では①重複受診②頻回受診③重複服薬が課題となっているが、それぞれの取り組みについてきいた。

重複受診でも2つの医療機関であればセカンドオピニオンとしての受診であると考え、呉市では3つ以上の受診に対して訪問指導を行っている。頻回受診については1つの医療機関で月15回以上の受診について、これも訪問指導を行っている。また重複服薬について、通常の10倍もの薬(このケースでは下剤であった)をもらっていたという人もいたそうであるが、そういった薬をもらい過ぎている場合には、やはり訪問指導を行っている。それぞれ資料のP15~17ページのような効果を出しているが、このことに関しては、保険者がレセプトの内容をしっかりチェックしているという認識を市民が持ってもらうことの効果が大きい、とのことであった。

尚、重複服薬について、立川市では「お薬手帳」の利用促進ということが対策として挙げられるなかで、お薬手帳を提示しなければ薬を出さないようにしたらどうか、という意見があることを伝えたが、呉市では現状「そこまでは難しい」という認識であった。

<資料>呉市国民健康保険 健康保険の取り組み

【所感】

呉市のデータヘルス計画の取り組みは、着実に成果を上げていることを実感した。本市も今年度で最初の計画実施時期が終了となるが、今後課題を整理したうえで、さらに取り組みを進めなくてはならない。

そのうえで呉市を視察し認識したことは、やはり訪問指導に代表される「顔の見える対応」の重要性であるとの感を深くした。

データヘルス計画は一義的には医療費の削減であるが、それはそのまま市民の健康を表すことになる。地方創生のなかで人を惹きつけるキーワードの一つは間違いなく「健康」であり、健康の度合いを示すのがデータであろう。データヘルス計画のさらなる取り組みを私たちも進めていかなくてはならない。

【環境建設委員会】なごや生物多様性センター(2016/11/01)

【日時】 平成28年11月1日(月)10:00~12:00

【視察先】 なごや生物多様性センター(愛知県名古屋市天白区元八事5-230)

【視察者】 佐藤寿宏委員長、大沢純一副委員長、浅川修一委員、福島正美委員、谷山きょう子委員、江口元気委員 全6名

【目的】 環境建設委員会としてなごや生物多様性センターを行政視察

【対応】 名古屋市環境局環境企画部 主幹(生物多様性推進) 後藤仁美 氏/環境活動推進課・主査(生物多様性市民協働) 岩田信也 氏/環境活動推進課 橋本侑麿 氏

【報告】

2005年に愛知県内で日本国際博覧会「愛・地球博」が開催された。『人類の叡智』というテーマのもと環境を中心としたこの博覧会が契機となり、名古屋市内でも環境問題に対する機運が高まった。

さらに2010年にいわゆる名古屋議定書が採択された第10回生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催されたことで、市民協働による自然や生物の保全活動を行う市民運動が活発化した。

そうした市民運動を支える施設として、今回視察したなごや生物多様性センターが翌2011年に開館。

立川市でも自然、環境分野の市民活動が多く行われていることから、今後の活動と協働を支える施策を研究するために視察を行った。

当施設はそれまで不燃ごみの中継施設であったものを改修・整備したものであり、年間の事業予算は4,000万円弱。内訳としては、その半分(約2,000万円)が嘱託職員(6名)の人件費であり、1,000万円弱がなごや生物多様性保全活動協議会への負担金等に充てられている。実質の運営費としては年間1,000万円程度であるという(平成27年度)。

なごや生物多様性保全活動協議会は、地域住民と市民団体、行政が協働で生物調査や保全活動を行うために設立されたものであるが、同センター内にその事務局が置かれ、センター長は協議会の幹事となっている。この協議会が市民運動を支える中心である。

さらに同センターの重要な役割として、市民参加による市内の生物に関する一斉調査がある。これは基礎自治体であるからこそ行える調査で、在来種と外来種の分布を詳細に追うものである。これによって、それまで未確認であった在来種の生物が発見されることも少なくないそうだが、その一方で毎回確認されるのは、多数の外来種の存在である。

多くはペットとして飼われていた魚や亀といった外来生物が、捨てられた先の環境で在来種を捕食するなどして繁殖しているという現状がある。

例えば池に住む在来魚がボウフラを食べることで安定していた生態系に、外来魚が放流されることで、在来魚が外来魚に食べられてしまう。その結果、ボウフラが増えて予期せぬ蚊の大量発生がおこってしまう、ということが起きているという。そのため、センターではこのような調査に留まらず、外来種の駆除も行っている。

そうした環境変化が起こることにより、名古屋市内では2015年の調査で絶滅危惧種とされる生物が389種にも及んでいる。これは「レッドデータブックなごや」として公表されているが、こうした普及啓発活動も同センターの事業である。

また専攻している地元学生とともに、資料としての標本作製等も行っている。

 

【所感】

「レッドデータブックなごや2015」のなかでも記述されているが、生きものの生息・生育状況というのはそれぞれの地域で異なり、日本全体では指定されていなくても、特定の地域ではある生物が絶滅危惧種という状況があるという。このことは同センターの担当者からも直接伺うことができた。それ故に、基礎自治体のような小さい単位での調査が今後ますます重要になってくるというのが担当者の見解であった。

自然保護とは環境の安定化と言い換えることもできよう。今後、住環境整備としての開発行為を行うなかで、どのようにしたら環境の安定を目指していけるのか。市民への啓発活動のあり方も含めて、立川市の自然環境を次の世代に引き継いでいくためには、今回視察したような調査・研究活動は大変重要であると感じた。

以上

【環境建設委員会】はだのクリーンセンター(2016/10/31)

 

【日時】 平成28年10月31日(月)10:00~11:30

【視察先】 はだのクリーンセンター(神奈川県秦野市曽屋4624)

【視察者】 佐藤寿宏委員長、大沢純一副委員長、浅川修一委員、福島正美委員、谷山きょう子委員、江口元気委員 全6名

【目的】 環境建設委員会としてはだのクリーンセンターを行政視察

【対応】 秦野市伊勢原市環境衛生組合 施設課・参事兼課長 栗原一彰 氏/総務課・参事兼課長 沼崎千春 氏

 

 

【報告】

はだのクリーンセンターは、これまで伊勢原市内にあった清掃工場の老朽化にともない、平成25年1月に竣工した施設である。

視察では施設の概要を説明するDVDを視聴した後、担当者の案内で工場内を見学した。

同センターの処理方式である「ストーカ式焼却炉」は、立川市の新清掃工場でも採用予定であるが、この方式が全国で一番稼働している焼却炉であることが担当者から説明された。さらに同センターの特徴として焼却蒸気を利用した発電が行われており、ここで発電した電気でセンター内の電力が賄われており、さらに余った電気は売却している。その売却額は、本年度で3億2,000万円が予定されているという。

後述するが、はだのクリーンセンターの建設にあたっては周辺住民の同意がなかなか得られず、その過程において煙突から出る排ガス濃度についても大幅な自主規制を行うこととなった。

そのため、ダイオキシンは法令規制値の50/100、塩化水素は同じく法令規制値の7/100、硫黄酸化物に至っては法令規制値の1/100以下という厳しい自主規制の下に稼働している。

施設内はガラス越しごみ処理の作業が見学できるようになっている他、処理過程を示す展示などで一般廃棄物処理について学習できる環境を整えている。施設完成から4年に満たないこともあり、施設内はとても綺麗であり整然とした印象をもった。

見学後には質疑応答が行われた。内容は別紙の資料3として添付するが、そのなかで担当者から同センターを建設するにあたり、平成9年から16年という年月が掛かったことが言及された。前述の通り、周辺住民の理解が得られなかったためで、それは大反対運動と言えるものであったという。その間に市長が2回も変わるということにもなり、最終的には同地で建て替えることはしないという覚書を定礎石の下に入れての建設となったということであった。

また、資料3に記載されていない質問事項として、焼却灰の処理にどのくらいの費用が掛かっているかを聞いた。

これについては、自前の最終処分場を持っており平成35年まで稼働可能であることや現状は70%程度が使用されていることが述べられた上で、年間1億4,000万円程の費用が掛かっているとの回答があった。

焼却灰は年間5,500トン排出され、そのうちの3,200トン、70%ほどが資源化(セメント化)されているとのことである。

 

【所感】

立川市の新清掃工場建設予定地の周辺住民が中心となって構成される「立川基地跡地利用施設検討委員会」で前年9月、同センターに見学に行っている。その際に見学者から多く聞かれた声は、こういう施設であれば近隣にできても安心だ、というものであった。実際に今回の視察でも同様の感想を持つことができた。

現在、立川市では新清掃工場の建設にあたり、大きな反対の声はない。それは同委員会の方々の努力によるところであるが、この「はだのクリーンセンター」のような施設を実際に見学していることで理解が進んだ点も大きいと考える。

そのような模範的ともいえる施設をつくるのに、およそ16年という年月を要した。関係者の大変なご努力に敬意を表するとともに、様々な住民の声を積み上げて建設された同センターの知識や技術を、立川市の新清掃工場建設に向けて活かしていきたい。

尚、焼却灰の処分と再利用について、はだのクリーンセンターでは平成35年以降に現在の最終処分場が稼働できないという状況が発生する。これ以降の焼却灰の処分費用については懸念が残るものであり、本市においても同様あるいは類似のケースの試算について検討が必要であろうと思われる。

以上

米沢市中小企業振興条例について (2016/07/27)

【日時】 平成28年7月27日(水)13:00~14:30

【訪問先】 米沢市役所(山形県米沢市金池5-2-25)

【視察者】 公明党立川市議団(高口靖彦、門倉正子、瀬順弘、大沢純一)

【対応】 米沢市産業部商工課・商業振興主査 菅原豊子 氏

 

【報告】

米沢市中小企業振興条例の概要にも記されているとおり、同市の中小企業は市内企業の99.8%(4,760事業所)を占めている。大企業とされるのは10社ほどであり、それ以外が中小企業に分類されるという状況だという。

回復の兆しがあるとはいえ、長期にわたる景気の低迷のなかで中小企業をとりまく環境は大変厳しい現実が続いている。中小企業は地域経済の中核であり、雇用を維持し市民生活を向上させるためには、社会全体でこれを支援していくことが必要であると判断し、米沢市ではそのための「中小企業振興条例」を制定。平成27年4月より施行している。

この条例については以前に議会でも議論があったという経緯はあるが、今回の制定にあたっては行政が主導し策定されたとのことである。平成26年7月に最初の検討委員会が開かれ、まず何のためにつくるのか、というところから始められたそうである。その後、全5回の議論が重ねられた。

この検討委員会では、条例案とともに「米沢市産業振興アクションプラン(仮称・案)」が議論された。このアクションプランは中小企業振興条例をもとにした振興推進計画である。視察した時点ではようやくたたき台ができた段階で、なんとか28年度中に策定できるよう作業を進めているということであった。

このアクションプランの策定と平行して、米沢市では条例を単なる理念で終わらせないことを強く意識している。

施行後の周知活動としては、講演会の実施のほか、出前講座などでもPRに取り組んでいる。とくに大学生に対して中小企業の役割を伝え、市内企業に関心を向けるという努力もしているとのことであった。

立川市議会として過去にこの中小企業振興条例について議論された経緯があり、ここでそのなかでの大きな論点となった点について聞いてみた。それは市内の産業としては当然、中小企業として括られる工業、商業のほかに農業などの分野もあるわけであり、あえて工業、商業分野の振興をすすめることを謳う条例をつくるのはどういった見解からなのか、というものである。

現在、米沢市は「米沢市ABC(Aはapple(舘山りんご)、Bはbeef(米沢牛)、Cはcarp(米沢鯉))」ということで市の特産品をアピールしている。こういった農業分野の活性化については当然これからも注力しなくてはならないはずだ。

担当者からは、そこは当然考えているが、一方で中小企業の振興というのは別段で考えなくてはならないものであり、中小企業に行政が力を入れていくということを特に示すものとして、今回この条例を制定した、という回答があった。

 

【所感】

本年4月1日時点で83,175人という米沢市の人口であるが、昨年同月よりも2,000人程減少している。そのような現状でどう市内の活性化をはかるか。

現在、東北中央自動車道の建設が進んでおり、平成29年中にも開通予定である。これが完成すると、米沢市と福島市の所要時間が20分短縮されることになる。今後、地域の中核的な都市である福島市との人的・物的交流がさらに多くなると見込まれる米沢市としては、中小企業にとって魅力的なまちになることで、人口減少社会にあっての生き残りをかけることになろう。

そういった現状下で策定されたこの条例であるが、その効果については今後の経過を注視していきたい。

また視察のなかで、米沢市中小企業振興条例のなかで示されていた市内業者の製品を利用することを推進するというところに強く関心をもった。(米沢市中小企業振興条例第4条第4項)

実はこの条文自体は、今回の条例ではじめて示されたわけでなく、これまでも別な形であったものだという。それを今回の条例制定にあたってここでも明文化したものだ。

市内事業者を市民、行政全体で育てていかなくてはならない、という姿勢を、条例の制定を通じて米沢市から感じ取ることができた。これは本市立川市の行政としては不十分であると私が感じていることでもある。

今後、本市としても企業振興を進めていくにあたっては、条例という形がいいかどうかを含めて、今後さらに検討していかなくてはならないであろう。しかし、市内業者を育てていくということをさらに強く掲げていかなくてはならないことは間違いない。

今回の視察は、法人税収入に大きく依存する本市にとって、どうしたら企業から選ばれる市になるか。そこに行政として、また政治としてどう「攻めて」いかなければならないか、考える大きな契機になった。今後も様々な地域の取り組みを研究しながら、立川市が企業にとっても魅力ある都市になるよう取り組んでいきたい。

 

兵庫県相生市 定住・子育て支援事業について (2016/01/21)

【日時】 平成28年1月21日(水)10:00~12:00

【訪問先】 相生市役所(兵庫県相生市旭一丁目1-3)

【視察者】 公明党立川市議団(高口靖彦、瀬順弘、大沢純一)

【対応】 相生市企画総務部・参事 中津尚 氏

【報告】

相生市は平成17年3月に財政危機を迎え、「相生市SOS宣言」を出すに至った。翌年度より始まった財政健全化計画の末、平成22年度には計画前の当初予算から約20%削減が達成された。

財政健全化と併せて市の将来を考えるなかで、「人口減少」ということが最重要課題との認識があがった。昭和49年をピークに減少を続けている同市人口の年齢構成で、特に年少人口(15歳未満)が県下で最下位、全国平均からも大きく下回っていることから、翌平成23年から始まった「第2期行政健全化計画」で、今回の視察事項である定住・子育て支援事業が開始されることとなった。

平成23年4月1日、相生市は「子育て応援都市宣言」を行う。これより「あれもこれも」というこれまでの総花的な行政運営から、「選択と集中」として“子育て世代をターゲットに定住促進を図る”ことに舵を切ることを運営の中心に据えた。

子育て施策を充実させることにより市外からの転入促進と市外への転出抑制を目指す事業は11項目に及び、「11の鍵」としてまとめられた。

同事業は一般会計上で主に教育費に含まれる。予算における教育費の割合は、平成27年度当初で24.5%であり、民生費(26.1%)と並んで同市の予算の柱となっているが、さらに注目すべきは前年度対比である。平成26年度は前年度比で72.5%、27年度は前年度比84.3%という、他の予算から突出して高い増加を示しており、こうした子育て施策にどれだけ注力していることが分かる。

一方で、こうした子育て・定住の取り組みについて、当初には市民から様々な反対意見があった。

「なせ子育て世代だけなのか」といった根本的なものから、「高齢者に対するサービスが後退するのでは」といった意見。さらに、「財政的に本当に続けられるのか」といった懸念も出された。

これに対して、市長が市民との対話集会(コスモストーク)を何度も開催し、理解を求めた。財政状況について丁寧に説明するとともに、特に高齢者には、高齢・福祉サービスは維持することを約束し、納得を得ながら事業が行われている。

相生市の子育てに対する取り組みは、当初の広告などでのPRとともに、現在は口コミで評判が広がっている。市民にも賛成の声が大きくなっている一方で、実際の定住人口増加に繋がっているのか、その効果はじつは判然としていない。「長期で取り組む必要がある」というのが行政の認識である。

【所感】

平成26年5月、日本創生会議・人口減少問題検討分科会が出した、いわゆる増田レポートの「消滅可能性都市」にこの相生市も含まれている。その大きな危機感の中で同市の定住促進事業が進められている。

現実には財政健全化計画のなかで、「もう削れるところはない」というくらい予算削減が行われている印象を受けた。市の説明では、あらたな施策を追加する余地がないなかでは、周知(PR)を継続していくことで事業効果を高めていくしかない、というのが今後の課題として示された。

地方の大変厳しい現実を見た思いであるが、反面、その現実が行政運営を選択と集中に向かわせ、強みのあるまちづくりを進めている。

立川市としても、こうした人口減少問題は他人事ではないにせよ、地方ほど緊迫した状況ではないのも事実であろう。だからこそ今のうちから、そうした立川としての特色をつくっていかなければならないし、相生市の教育費への注力と市民へ理解を求めていく姿勢は、大きく学ぶところがあった。

岡山型持続可能な社会経済モデル構築総合特区(在宅介護総合特区)の取り組みについて (2016/01/20)

【日時】 平成28年1月20日(火)13:00~16:30

【訪問先】 岡山市役所(岡山市北区大供1-1-1)

【視察者】 公明党立川市議団(高口靖彦、瀬順弘、大沢純一)

【対応】 岡山市保健福祉局医療政策推進課・課長 福井貴弘 氏

 

【報告】

岡山市の要介護認定率は全国平均よりも2%程高く、介護保険料が6,160円(平成27年)と県内15市中2番目、全国の政令指定都市のなかでも3番目に高いという状況にある。将来予測では、この介護保険料が平成37年(2025年)には9,000円程度まで上がり、全国平均の8,200円をかなり上回るとされている。

こうした状況のなか、岡山市が調査したところによると、市民が医療、介護を受けたい場所として市民の3割以上、さらには終末期に過ごしたい場所としては4割以上が「自宅」を希望しているという。国の医療・介護政策の方向性として、在宅医療を中心とした地域包括ケアシステムの構築が全国の基礎自治体で求められるなかで、それに併せて今後の社会保障費増大をどう抑制していくか、ということも欠くことのできない視点である。

同市には岡山大学病院や独立行政法人国立病院機構岡山医療センターを中心に医療機関が多く、「医療都市」を標榜している。医療及び介護機関が充実しているという環境と、市保健福祉局に厚生労働省出向者が局長として在籍していた経緯――余談であるが、岡山市は「点字ブロック」や「民生委員制度」の発祥の地で、元来そうした福祉的な視点を持つ土地柄でもある――もあり、国に特区申請。平成25年2月に全国初の在宅介護総合特区に指定され、これまで11項目を特区として国に提案している。

その中で第一に挙げられたのが「通所サービスに対する自立支援に資する質の評価の導入(デイサービス改善インセンティブ事業)」である。役所的言い回しの典型のようで何のことか分からない方も多いと思うが、つまりこういうことだ。

現行の介護保険制度では、利用者の要介護度が重くなるほど事業者の報酬が増える仕組みになっている。これは一方で、利用者の身体機能が改善に向かうと事業者の報酬が少なくなってしまうことにもなる。これはある意味、事業者側が努力すればするほど経営が立ち行かなくなるという矛盾を抱えている。

このインセンティブ事業は、そうした矛盾を解消することを目指した制度である。

例えば要介護度「3」だった利用者が、事業者のリハビリなどの取り組みによって身体機能が回復した結果、要介護度が「2」になったとする。これまでであれば、要介護度3と2の報酬額の差は、事業者としては減収となっていた。これを、その差額分は奨励金として事業者に与えるというのがこのインセンティブ事業である。

これは事業者の「質」を評価するものであり、事業者に適正な評価を与えることによって事業改善意欲の向上が期待できる。また、利用者本人はQOLが向上し、それによって本人を介護する家族の負担も軽減されることに繋がる。

平成26年6月に始まったこの事業には、市内約290事業所中151事業所が参加(手挙げ、つまり希望する事業所が申請する形をとっている)。質の評価指標5項目のうち3項目以上達成した60の事業者を「指標達成事業者」として26年度末に公表した。(達成できなかった事業所も、そうした改善の取り組みに意欲的だとして同様に公表している。)

実は、この平成26年度の第一回目の取り組みには、先の奨励金は事業者に支給されていない(27年度に実施予定)。

岡山市ではこの事業を行うにあたって、まず市内の通所介護事業所全体の質の向上を目指した。一口に通所介護(デイサービス)といっても、事業所によってその形態は様々で、身体機能の回復を主な取り組みにしているところもあれば、認知症のケアを中心にした事業所、あるいは家族の負担を軽減するため利用者を預かることに特化した事業所もある。そうした事業所「機能」の違いを超えて、「利用者の自立」を目指した評価指標を目指した。(この指標作成には厚労省補助金(補助率10分の10)を活用。)

この評価作成とともに、同事業の創設にあたっては厚労省や有識者から様々な意見が出された。

最も中心的なものは、この事業の根幹であるインセンティブについてであった。

介護報酬は介護保険制度の根幹であり、特区としての特例であっても実施はできない、という意見や、要介護度が下がる見込みのある利用者を選別することに繋がるのではないか、という懸念が表明されたという。

しかし、結果的にこの評価指標(アウトカム評価)は平成27年6月30日に閣議決定された『「日本再興戦略」改訂2015―未来への投資・生産性革命―』に盛り込まることになった。政府はこの評価指標の効果検証として介護サービスの質の向上に資するか分析するとともに、介護サービスの室の評価の仕組みづくりにについて「着実に検討を進める」ことになった。

こうした介護サービスの質についての評価を検討する「先行自治体検討協議会」というものが存在し、現在は岡山市が事務局となり、川崎市、品川区、名古屋市、福井県、滋賀県の6自治体で構成。今後は江戸川区も参加する見通しであり、さらに平成29年度からは協議会から研究会への発展も検討されている。

その他、岡山市の特区としての取り組みでは、現在介護保険の給付対象となっていない、いわゆる介護ロボットなどを「介護機器貸与モデル事業」として利用者に1割負担で貸与する事業。また、「介護予防ポイント事業」という、高齢者自らが介護予防に取り組んでいくことを進めるポイント制度などがある。

【所感】

岡山市でのこうした医療・介護についての取り組みは、一貫して行政が旗振り役、つまりリーダーシップをとって行っているが、これには一つの経緯がある。

老朽化した岡山市立市民病院が平成27年5月に建て替えられたが、建て替えにあたっては、そもそも市民病院が必要かどうかという議論がおこり、協議会がつくられた。その協議のなかで「断らない病院」「周辺地域の保健医療福祉関係の連携強化」という市民病院としての役割を市がリーダーシップをとってまとめてきた。そうした姿勢を医師会を始めとした地元の医療団体が評価したことで、行政主導で取り組みが進められたということであった。

医療・介護分野に限らず、先進的な施策を行っている行政には、必ずと言っていいほどリーダーシップを取る方、あるいは団体が存在する。

今回の視察は「特区」の取り組みであって、そのまま立川市ですぐに展開できる施策ではない。しかし、この特区としての施策が全国的な取り組みに拡大していったとき、それを立川市でどのように形づくり、実行していくのか。それには知見も必要であるが、やはり効果ある運用をしていくためにはリーダーシップをとる存在が欠かせないと考える。

今後展開が予想される大変重要な施策として、私たちは更に研鑽を深めたい。

 

シーニックバイウェイ支援センターについて (2015/07/29)

 

【日時】平成27年7月29日(水)10:00~12:00

【訪問先】一般社団法人シーニックバイウェイ支援センター(札幌市北区北11条西2丁目2-17 セントラル札幌ビル)

【視察者】公明党立川市議団(高口靖彦、門倉正子、瀬順弘、大沢純一)

【対応】国土交通省北海道開発局建設部道路計画課道路企画官・井上勝伸 氏/一般社団法人シーニックバイウェイ支援センター 伊藤信之 氏

【報告】

今回視察したシーニックバイウェイ支援センターは、日本でのシーニックバイウェイ推進、発展を支援する組織であるが、まずは「シーニックバイウェイ」についての説明が必要であろう。

元々はアメリカで始まったシーニックバイウェイは、「シーン(scene)=風景」と「バイウェイ(byway)=寄り道」を合わせた造語で、道路を中心とした観光や地域振興の取り組みを言う。

この制度を参考にして平成13年8月に国土交通省が北海道でシーニックバイウェイに取り組むことを発表。平成17年より「シーニックバイウェイ北海道」としたスタートし、道内ではこれまで11のルートが指定されている(平成27年7月現在)。

実施主体は自治体をはじめとして商工会議所、観光協会、旅行業協会など経済団体ほか、地元の自治会やNPO法人など各種団体が連携することになる。先述の通り、道路を中心としたこの取り組みは広域に渡り、行政をまたぐことにもなり、他地域のそういった団体とも連携をとることになるが、そういった団体が同じテーブルにつくまでの、いわばお膳立ては国土交通省が行う。その協議のもと、実際の運営にあたって、コンサルティングを行うのが、シーニックバイウェイ支援センターということになる。

 

このシーニックバイウェイの活動は、交流人口の増加と地域産業の振興を目指す。地域の魅力が再発見され、その環境の保全、改善が住民の手ではかられていくわけであるが、同様のことは観光地をめざす多くの地域でも行っている。シーニックバイウェイの発想は、そうした地域ごとに独立して行われている活動を、道路という資源で繋げていくことで、観光を単発(一地域)で終わらせないようにすることである。観光地と観光地の間の道を魅力的に彩ることで、従来であれば通り過ぎるしかなかった場所も観光の対象となり、これまで足が向けられることのなかった地域に観光客を呼びこむこともできる。

しかし、こうした広範囲の取り組み、更には多くの団体が関わる取り組みというのは、誰が中心となるのか、責任の所在はどこかといった問題が複雑になり、運営が難しく思われた。それについて担当者に率直に伺ったところ、そういったことでの大きな問題はない、とのことであった。これは、北海道の人口減少が他の都府県と比較して10年早く進んでいる、という危機感が大きく、言うなれば身内で喧嘩している暇はない、といった認識を多くの関係者が共有しているためであると言う。

自然という大きなコンテンツを持つ北海道にあって、大小さまざまな団体が自分たちの地域に愛着と誇りを持ってその景観づくりを行っているということは、理想的であり、大変羨ましくも思える。多くがボランティアに頼るこうした取り組みについて、それを行っている人たちのほとんどは「やっていて良かった」と言われるそうである。しかしその一方で「後継者がいない」ということ課題であるそうだ。これは北海道のみならず全国で共通の問題であるが、特に人口減少の危機感を抱えている北海道の人たちには、実感であり深刻な問題として捉えられているのだろう。地域産業の振興と同時に、こうした活動を継続していくためにも、活動をどうやって事業化していくかが、今後の課題であるとも伺った。

このシーニックバイウェイの取り組みは、「事業の継続性を保つために補助金に頼らない」という考えから、行政からの補助金は一切入っていないそうである。じつは本家であるアメリカでは現在、このシーニックバイウェイの取り組みが停滞中であるそうだ。その理由は連邦予算がなくなってしまったことによるという。

北海道で始まった日本のシーニックバイウェイは、2007年より「日本風景街道」として全国展開され、平成26年度までに135ルートが設定されている。

 

【所感】

立川市においても交流人口の増加、観光客の誘致には力を入れているが、市内回遊がなかなか広がらないことが課題となっている。

北海道の取り組みと同じように考えるのは物理的な規模としては無理があるが、シーニックバイウェイの発想自体は、立川の観光を考えたときに参考になることは多いと思う。

つまり、本市の中だけで観光を考えるのではなく、周辺自治体との広域で観光を「繋ぐ」ことで、その沿道も含めて地域を活性化していということだ。

この視察で一番実感したことは、人口減少に対する地方の危機感の違いであった。立川市も本年をピークに人口が減少することから、その対策を考えてはいるが、危機感ということでは北海道をはじめ地方の実感には遠く及ばないのではないか。このシーニックバイウェイが強い危機感から出発した取り組みであり、だからこそこれからの本市にとって参考になることは多いと感じた。

人口減少社会にあって、交流人口を増やしていくことは最重要課題の一つである。単体では観光資源が少ない自治体では、他地域と連携してパッケージで観光客を誘致していく必要がある。このシーニックバイウェイの考え方は、今後の本市の観光のあり方に大きく反映させていきたい。

 

宮崎市の地域コミュニティ活動 「地域自治区制度による住民主体のまちづくりについて」 (2015/05/27)

【日時】平成27年5月27日(水)10:00~12:00

【訪問先】宮崎市役所(宮崎市橘通西1-1-1)

【視察者】公明党立川市議団(高口靖彦、瀬順弘、大沢純一)

【対応】宮崎市地域振興部 地域まちづくり推進室長・本村真二 氏/同推進室 主査・有馬隆博 氏/同推進室 主査・富正和 氏/地域振興部 地域コミュニティ課長・河野重臣 氏

 

【報告】

宮崎市市民の自治会加入率は56.9%で、これは九州のなかでも非常に低い値であるという。

これまで地域のまちづくりは、自治会をはじめPTA、子ども会、老人クラブ、婦人会などが「地縁団体」としてそれぞれ活動してきたが、なかでもその主体を担っていた自治会の加入率が上がらないことや、それに伴う地域の連帯感が希薄になってきていること。さらにマンションを中心とした新規住民のコミュニティが生まれにくいことなどから、各団体が独自に活動しているだけではこれからのまちづくりは困難であるとの判断から、平成18年1月より「地域自治区制度」を導入した。

現在は自治区として全市を21の地域に区割りしている。

この区割りは町名で分け、また自治会も割らないことを基本としているが、場合によっては自治会が2つの自治区にまたがるケースや、人口の偏りを調整するために町の一部を他地域に入れることもあるようだ。

また、自治区の規模も幅があり、規模の一番大きい区と小さい区で、人口で15倍(最大=57,439人、最小=3,779人)、また面積で180倍(最大=144.6㎢、最小=0.8㎢)という開きがある。

地域自治区の組織には「地域協議会」と「地域自治区事務所」がある。この2つの事務所はともに市役所業務の一部を担っているが、互いの関係はおおまかに議会と事務局の位置付けに似ている。

そしてこの「地域協議会」と自治会、PTAなどの各種団体、NPO団体、応募した地域住民などで構成された「地域まちづくり推進委員会」が連携して地域のまちづくりを行う、というのが「地域自治区制度」である。

この「地域協議会」と「地域まちづくり推進委員会」の関係は、議会と行政の関係に見立てると分かりやすいかもしれない。

地域まちづくり推進委員会が「事業計画」を作成し、地域協議会がその審査をする。その事業計画に基づいて、委員会が宮崎市に交付金の申請をする、ということになる。(尚、この自治区あるいは推進委員会について法人化されているわけではない。交付金はまちづくり推進委員会の事務局の銀行口座というものがあり、そこに入金されるという形をとっている。)

先述の通り、これは基礎自治体である宮崎市のなかに、文字通り自治行政体をつくるようなものである。合併を重ねたことによる行政面積の拡大や、人口密集地域と周辺部とで抱える課題が異なることなどから、各地域の課題は、そこに住む住民で主体的に執り行なってもらい、財政措置もする、というのがこの制度であり、この取り組みの先にはコミュニティビジネスの支援も行い、住民が自主財源を確保することも視野に入れている。

一方で、地域自治区の議会のような役割を担っている地域協議会は、まちづくり推進委員会が作成した計画の追認機関でしかない、というような批判や、担い手の固定化などが指摘されている。

さらに、自治会の加入率についてはこの制度のもとでも変化がないことから、この地域自治区というものの位置付け明確にし、住民に自治会加入を努力義務として提示するために、「地域まちづくり推進条例(仮称)」制定の議論に入っている。

 

【所感】

この制度をつくるにあたっては、自治体のなかにさらに同じような組織をつくることになることから、当初は議会のなかで、これまでの議会の役割はどうなるのか、といった議論もあったようである。

また『「地域協議会」と「地域まちづくり推進委員会」の関係は、議会と行政の関係に見立てると分かりやすい』と述べたが、その議会的な役割である地域協議会が地域まちづくり推進委員会の追認機関では、といった批判は、全国で聞かれる議会に対する市民の声にも重なる。

そのように、基礎自治体といわれるものの中にさらに同じような仕組みの自治区をつくるのがこの制度であるという感想を持った。

周辺自治体と合併をしてきた自治体が、そのなかで地域を分化して行政体のようなものをつくるという取り組みは、広域行政と基礎自治体のあり方を考えさせられるものでもあった。

住民主体のまちづくりというのは、立川市でもこれからの大きな課題である。今回視察した宮崎市の取り組みは、全国様々な自治体で試行錯誤されているものの一つではあるが、そのなかでもかなり踏み込んだ制度であると言える。

地域の自主財源づくりを一つの目標としているが、その取り組みも今後注視したい。

 

【宮崎市】(平成26年10月1日現在)
人口402,433人
世帯数176,993世帯
面積643.76㎢