(静岡県)タンデム自転車楽しんで! 公道走行が可能に

平成29(2017)年2月21日(火)付 6面

障がい者の行動範囲広がる

一人では自転車に乗れない視覚障がい者が思い切り風を感じながらサイクリングを楽しめる二輪タンデム自転車(二人乗り)。これまでは公道で走ることができなかったが、静岡県は昨年12月、障がい者団体などから要望が強かった二輪タンデム自転車の公道走行の解禁に踏み切った。ボランディア団体などと共に啓発活動に取り組んできた公明党の盛月寿美(ひろみ)県議の議会提案が実現したもので、解禁を受け、静岡県が今年1月から市内で無料貸出を始めるなど、タンデム自転車普及への機運が高まっている。盛月県議はこのほど、視覚障がい者らとレンタサイクル店を訪問し、利用状況などを聞いた。

二輪タンデム自転車は、二つのサドル(座席)とペダルを縦列に装備した自転車で、2人が前と後に乗って協力しながら同時にペダルをこいで駆動させる。ハンドルやブレーキ、変速の各操作は前方の人が行うので、後方には視覚障がい者や小さな子どもなどが乗っても安心してサイクリングが楽しめる。本来、自転車の「二人乗り」は道路交通法違反だが、タンデム自転車の公道走行の許否は都道府県の公安委員会が決めることができる。

二輪タンデム自転車の一般の認知度は低いが、パラリンピック自転車競技の正式種目に採用されており、リオデジャネイロ・パラリンピックで女子ペアが日本人初の銀メダルを受賞した(協議では前方に健常者、後方に視覚障がい者が乗る)。2020年の東京五輪・パラリンピックの自転車競技(トラック、マウンテンバイク)は、静岡県伊豆市の競技施設で開催されることになっており、今回の公道走行解禁で健常者の利用普及はもちろん、障がい者の行動範囲も広がると期待されている。

こうした中、自転車の利用促進をめざして自転車道ネットワークの整備を進めている静岡市は1月7日から、同市清水区の三保半島にあるレンタサイクル店でタンデム自転車3台の無料貸し出し事業を実験的に始めた(3月末まで)。同市では、「三保半島は世界遺産の富士山や羽衣の松の絶景、駿河湾の風を楽しめる絶好の場所」(交通政策課)として、観光客や家族連れの利用を見込んでいる。

公明県議の提案実る

タンデム自転車については、盛月県議が4年前から障がい者ボランディアグループ「さくらの架け橋会」(森美佐枝代表=同市清水区)と連携しながら普及啓発活動に取り組んできた。同会は、6年前、東日本大震災の被災者を支援するために開催したチャリティーコンサートをきっかけに音楽活動を開始。メンバーには視覚・聴覚障がい者、発達障がいの高校生や家族などが多く、趣旨に賛同した全盲のギタリスト・服部こうじさんやフルート奏者の綱川泰典さんなどプロの音楽家も参加している。

コンサートやイベントを通して市民との交流や被災地支援を続ける中、メンバーからの要望もあって視覚障がい者が楽しめるタンデム自転車の普及に力を入れるようになり、募金で購入した自転車を地域の公民館に展示したり、コンサートなどで披露したりしている。盛月県議もこうした活動へ積極的に参加し、活動を全面的にサポート。議会でも16年2月の定例会で公道走行の解禁を提案するなど、早期実施を推進してきた。

レンタサイクル店を訪れたギタリストの服部さんは、「タンデム自転車に乗って走るとすごく気持ちがいいし、運動にもなる。二人が協力しないと快適に乗れないので、コミュニケーションを深めることができます」と笑顔を見せた。森代表は「タンデム自転車は災害時にも有効です。津波が来た時、障がい者を乗せれば素早く避難できますから」と、普及の必要性を熱く語った。

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