「基金」についての不毛な議論に終止符!

立川市議会として毎年行なっている議員研修会が本日開催されました。

今回の研修会は「予算」をテーマに、講師に関西学院大学教授の小西砂千夫先生をお招きしました。

研修会では冒頭、これまで様々な地方自治体の財政を分析してきた小西教授から、立川市は「極めて特殊な財政状況」であることが述べられました。

その特殊な状況とは「極めて恵まれている(財政が良好である)こと」。なかでも起債(市債を発行してお金を調達すること。つまり借金)できる余地もまだまだ残されている立川市の財政は「ほとんど現金主義会計に近い」とも言及されました。(さらにそういった財政状況であるので、立川市での今後の大きな課題である公共施設の更新についても「起債で前倒しして行っても問題ないと考える」との考えを示されました。)

小西教授は現在の地方財政について「東京都の一人勝ち」としたうえで、立川市も含め東京都が反対をしている国による都財源の地方移譲(東京都では「召し上げ」とも形容している)については賛成の立場をとっているそうです。

その理由は、本当に切羽詰まった地方財政を見てきたことによると言います。

市民が利用する一階のフロアのみ照明がつき、二階以上は電気がつけられずに、パソコンディスプレイの明かりを頼りに仕事をしなければならないような役所がある現実を目の当たりにしたとき、そういったところに財源として分配するのはやむを得ないという考えを持つに至ったとのことでした。

とくに平成20(2008)年に起きたリーマン・ショックでは、全国の自治体が財政的に大きな影響を受けました。

以降、地方自治体はいざというときの財政に備えるための基金(つまり貯金。特定の使いみちを決めていない財政調整基金という貯金)を積み立ててきており、全国的には規模の小さい自治体ほど多く基金を積んでいる、という傾向があります。そのなかで立川市は、リーマン・ショック以前からこの財政調整基金を着実に積み立ててきており、その額は標準財政需要額(自治体規模ごとの標準的な支出額)の20%という独自の目標を達成している状況です。

一方で、この基金というのは貯めればいいというものでもありません。

税金というのは、簡単に言えば、みんなでお金を出し合って生活をよくしていくために使いましょう、というもの。

それを貯める=使わないということであり、お金を出した市民がその利益をその時点では受けられない、ということになります。5年後に立てる市民会館のためにお金をためる、ということであれば、とりあえず5年待てば利益をうけられます。しかし、いざという時の貯金ということは、言い換えればいつ使われることになるかわからない。もしかしたら、自分が生きている間に使われないかもしれません。

ですから、基金を積むというのは、納税者(=市民)に対してしっかりした説明が必要です。

しかし、この説明が難しい。なぜなら、どれくらい貯金があれば安心であるのか、という基準がどこにもないからです。

さきほど立川市の財政調整基金は、標準財政規模の20%を目標にしてきた、と書きました。これは財政において、基金の必要額として示される一つの基準です。ですが、なぜ20%なのか。実はこのことについては、誰も考えを示していません。財務省も総務相も。立川市も当然これまで示してきませんでした。

私はこれまで、議会で「基金を積む以上はその根拠を示すべきだ」ということを行政に再三求めてきましたし、私なりの考えも示してきました。

一方では、行政がその考えや根拠を示してこなかったが故に、議会では一部から「そんなに貯めるのではなくて、もっと今の市民サービスのために使うべきだ」という意見も主張されてきました。

「貯めるべきだ」「いや、使うべきだ」。そこに根拠がない以上、ここは言う側の考え、さらに言えば感情にしかならず、この基金の基準については、これまで不毛なやりとりが議会で続けられてきました。

基準が示されてはじめて、その基準に対しての適正性の議論ができる。生産性のない議論はやめにしたい、という思いで、この基金の基準についての考えを、これまでも私なりに示してきたわけです。

今回お招きした小西教授は、そうした地方会計について見識が深く、さらに新著(「自治体財政の知恵袋―議会答弁や住民説明に役立つ」(ぎょうせい刊))では持論として、財政調整基金は標準財政規模の20%は必要で、さらに不交付団体はそれ以上の積み立てが望ましい、ということを書いております。そこでこの論争に終止符を打つべく!今回の研修会で、小西教授にこのことについて質問しました。

「財政調整基金の必要額を標準財政規模の20%としてる根拠について教えてください」。小西教授の答えですが、結論的には20%の根拠について、いわゆる経験値、体感的なものであるということでした。

そのうえで、不交付団体というのは、交付税が入ってこないということでは財政的に自立しなくてはいけない、ということであるが、一方で良い面もある、とも述べられました。なぜなら、歳入(収入)の予測ができるから、ということです。

もちろん、国から交付税が入ってくる交付団体である自治体も、次の年の歳入を予定して予算を組みます。

しかし昨今、国の財政の方向性として交付税をあてにできなくなってきている現状があるのも事実で、交付税に頼った自治体運営はますます難しくなってくるはずだと言います。

一方で立川市では、そうした国からの交付税を計算に入れない分、将来予測がしやすい、ということでした。

立川市の人口が来年あるいは数年で大幅に増加する、ということはないわけで、つまり景気予測で法人(企業)と市民からの税収がある程度予測できることになります。(実際には税体系が変わることで収支に大きく影響することがあり、予測も簡単ではないのですが、この場合はざっくり言うとという話です。)

そうしたなかで、経済の大きな落ち込みにたいしても減収予想から必要な基金の割り出しができるのはないか、ということでした。

ここでわたしはこれまで懸念してきた疑問をぶつけました。

それは災害時の固定資産評価についてです。

立川断層が実際にあるかどうかわからないが、たとえば立川市が震源になるような大規模な災害があったときには、固定資産評価は大きく下がることが予想される。それは市の固定資産税収入に大きく反映していくことになるだろう。では、それに対応するような基金というのは、どれくらいの規模と考えるか。

これについて小西教授は、少し考えたあとに言われました。

「それに対応する基金を積むのは無理だ。」

そのような事態になれば、立川市も不交付団体ではいられず交付団体になってしまうと思いますし、一時的だとしてもそのときは国から災害復興などのお金が入ってくるはずです。しかし、それもどのくらいかは計算が難しい。

つまり、いざというときの基金規模にも限度がある、とのことでした。

大災害では、基金も焼け石に水かもしれない。そう考えれば、大災害に対応するものでなく、あくまでも経済的な急変に対応できる規模、というのが基金の役割ということになるでしょう。

そしてその基金の必要額は、専門家の経験をもとに算出して「標準財政規模の20%(+α)」ということです。

立川市がその額に達していることを考えれば、現状は適正であり、財政調整基金の積み増しはいったん終了でいいでしょう。

そしてこれまでの不毛な議論も、これで終了できるのではないでしょうか。

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