呉市データヘルス計画について(2017/01/24)

【日時】2017(平成29)年1月24日(火)13:00〜15:00
【視察先】呉市役所(広島県呉市中央4丁目1–6)
【視察目的】データヘルス計画について
【視察者】公明党立川市議団(高口靖彦、門倉正子、瀬順弘、大沢純一、)
【対応】呉市福祉保健部保健年金課長補佐 兼 国保事業GL 大下佳弘 氏


【報告】

立川市では平成23年3月にデータヘルス計画を策定した。今回の計画は実施期間を昨年度(平成28年度)から本年度(29年度)までの2カ年としており、その状況を踏まえた上で、来年度以降の計画を進めていくことになる。

本年度で最初の区切りを迎えるにあたり、このデータヘルス計画発祥の地である呉市での取り組みを視察した。

データヘルス計画とは、医療機関で電子カルテに入力されたレセプトデータを分析し、市民がどのような病気に罹っているかということや、受診の状況、さらには薬をもらいすぎていないか、といったことを国民健康保険の保険者として市が把握して、市民の病気の重篤化や慢性化を防ぐことを目的としている。さらにその過程では、投薬状況を把握することで過剰な服薬や飲み合わせが禁止されている薬を服薬していないか、といった管理も行なっている。病状の重篤化、慢性化を防ぐことで医療費削減に繋がっていくため、増大する社会保障費を抑えられることから、国は全国の市町村にこの計画策定を求めており(注)、立川市も平成27年度末に策定した。

(注)「日本再興戦略」(平成25年6月14日閣議決定)においては、「すべての健康保険組合に対し、レセプト等のデータ分析、それに基づく加入者の健康保持増進のための事業計画として「データヘルス計画」の作成・公表、事業実施、評価等の取組みを求めるとともに、市町村国保が同様の取組を行うことを推進する。」としている。(立川市国民健康保険データヘルス計画より)

呉市の医療データを分析して重篤化・慢性化を防ぎ、医療費を抑制する取り組みは「呉モデル」として国が推進する事業となった。そもそも呉市でこの事業が開始された背景には、全国平均よりも医療費が高いという課題があった。

造船業を基幹産業として昭和18年に40万人まで増えた人口は、昭和50年には24万人にまで減少した。その後、平成17年「平成の大合併」で1市8町が合併したが、毎年1%ずつ減少していく人口は、本年23万人を切るという状況にある。その中で、高齢化率は33.5%と、人口15万人以上の同規模の自治体で第1位である。

呉市の医療環境として特徴的なのは、400床以上の総合病院が3つあり、人口に対して病院・病床数が多いということである。医療機関が身近にあることは、市民にとって安心である一方、気軽に受診できることが一人当たり医療費の増加に繋がっているのではないか、という懸念が以前より持たれていたようだ。
また、市の国民健康保険加入者は5万人弱だが、そのうちの半数以上(52%)が高齢者(65才〜74才)であり年金生活者が多く占めるという、低所得層が多い構成となっている。

国民健康保険の一人当たり医療費の推移としては、全国平均や広島県内の平均費用が伸びているなかで、呉市も過去5年間の推移として右肩上がりという現状ではある。しかし近年では、呉市の「高齢者」医療費は県平均より下回っている状況が出始めているという。市全体の医療費が増えているのは、若年者の医療費が原因であり、これは同市の精神病院に他県からも入院・転院してくる精神疾患患者が増えているというのが主な理由とのことであった。周辺に精神病院が少ない現状では不可避なことであり、こうした事情を除けばデータヘルス計画として医療費の適正化に努めてきた成果があらわれていると推測される。

先述のとおり、データヘルス計画はレセプトデータを分析することで医療費の無駄を削減することが中心の一つであるが、短期にその効果を求めることができるものとして、被保険者へのジェネリック医薬品の使用促進がある。呉市では対象者へ2ヶ月に1度通知を発送し、年間医療費を約2億3,900万円削減している(平成27年度)。尚、立川市でも同様の事業を行っており、年間約1,670万円の削減効果が出ている(平成26年度)。自治体規模の違いを考慮しても削減効果の金額が大きく違っているが、呉市が自治体として全国初の試みとしてジェネリック医薬品促進通知を開始したのは平成20年であった。削減額の大きさは呉市が取り組んできた7年間で市民の認識が広まったことにあろう。立川市としても今後の継続的な取り組みによってさらなる削減が期待できると考える。このジェネリックの差額通知事業については、行政と医師会の連携の強さによって推進できているということも担当者より伝えられた。

多少脇へ逸れるが、国民健康保険料を滞納した市民に対して呉市では、督促に応じない場合は国民健康保険で債権回収の専門部署をつくり、差し押さえもしている。医療費の削減に努めるとともに、そうした収入の面についても積極的な行動をとっており、平成20年に策定した財政運営健全化プログラムのもとで国民健康保険会計に対して一般会計からの補填は行なっていないそうである。

さらに生活習慣病の予防対策として、特定健康診査及び特定保健指導の実施率向上の取り組みについてもきいた。
呉市で平成20年より行なっている特定健診は現在、課税世帯で1人1000円の自己負担で実施している。これを来年度から無料化にするということであった。さらには受診機会を休日にも行い、受診場所の追加や時間帯も拡大するなど機会を増やしている。しかし現実にはなかなか受信率が上がっていないということであった(開始当時20%だったのが近年は25%)。立川市の受信率は34%程度であるが、じつは呉市よりも東京圏域の方が概ね高いそうである。これについては担当者が「逆に秘訣を聞きたい」と漏らされていたが、どこも得策といったものはないのが実情のようである。

ただ、その中で特定健康診査の受診者をどうカウントするか、ということもあがった。

ある病気で治療中の方が、あらためて健康診査を受けるということは実際にはほとんどないのではないか。そうであれば、治療中のデータのなかに特定健診のデータにあてはまれるものがあれば、その人については特定健診を受けているとカウントしても問題ないはずで、そういった実質的な受診率というものも考えていきたいとの話しがあった。

また、特定健康診査異常値放置に対する受診勧奨についてもきいた。

過去に受診歴がある方で最近は受診が止まっているという人が、呉市では本年度400件ほどあり、2つ以上の疾患がある人については訪問をし、それ以外は文書で通知を行っている。訪問をした結果、半数以上が受診を再開している。

さらに「受診行動の適正化」について、立川市では①重複受診②頻回受診③重複服薬が課題となっているが、それぞれの取り組みについてきいた。

重複受診でも2つの医療機関であればセカンドオピニオンとしての受診であると考え、呉市では3つ以上の受診に対して訪問指導を行っている。頻回受診については1つの医療機関で月15回以上の受診について、これも訪問指導を行っている。また重複服薬について、通常の10倍もの薬(このケースでは下剤であった)をもらっていたという人もいたそうであるが、そういった薬をもらい過ぎている場合には、やはり訪問指導を行っている。それぞれ資料のP15~17ページのような効果を出しているが、このことに関しては、保険者がレセプトの内容をしっかりチェックしているという認識を市民が持ってもらうことの効果が大きい、とのことであった。

尚、重複服薬について、立川市では「お薬手帳」の利用促進ということが対策として挙げられるなかで、お薬手帳を提示しなければ薬を出さないようにしたらどうか、という意見があることを伝えたが、呉市では現状「そこまでは難しい」という認識であった。

<資料>呉市国民健康保険 健康保険の取り組み

【所感】

呉市のデータヘルス計画の取り組みは、着実に成果を上げていることを実感した。本市も今年度で最初の計画実施時期が終了となるが、今後課題を整理したうえで、さらに取り組みを進めなくてはならない。

そのうえで呉市を視察し認識したことは、やはり訪問指導に代表される「顔の見える対応」の重要性であるとの感を深くした。

データヘルス計画は一義的には医療費の削減であるが、それはそのまま市民の健康を表すことになる。地方創生のなかで人を惹きつけるキーワードの一つは間違いなく「健康」であり、健康の度合いを示すのがデータであろう。データヘルス計画のさらなる取り組みを私たちも進めていかなくてはならない。

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