同一労働同一賃金の指針案

2017(平成29)年1月15日(日)付

非正規の待遇改善めざす

政府は先月、パートタイム労働者や派遣社員といった非正規労働者と、正社員の不合理な待遇差の改善をめざす「同一労働同一賃金」のガイドライン(指針)案を策定した。日本における待遇差の現状や、今後の課題などについて解説する。

不合理な扱いの具体例を明示

日本では、非正規労働者と正社員との間で給与や福利厚生などに関して大きな待遇差が存在する。

例えば、多くが正社員であるフルタイム労働者の賃金水準(時間当たり賃金)を100%とすると、パート労働者の賃金は、その56.6%しかない。

数値は徐々に改善しているものの、欧州諸国の70~80%程度【グラフ参照】と比べると見劣りする。正社員の多くが勤続年数に応じて給与が高くなるのに対し、非正規労働者の大半は横ばいで推移しているのも問題だ。

さらに、厚生労働省の調査では、正社員に賞与を支給する企業は83.4%なのに対して、パート労働者や37.3%にどとまる。金額も従業員1000人以上の企業では、正社員が130万円超なのに対して、パートは4万円に満たない。

福利厚生でも待遇差が生まれている。2011年に通勤手当を正社員に支給している事業所の割合は85.6%だが、パートへの支給は65.1%。慶弔休暇は正社員の82.7%に対し、パートは42.2%だった。

こうした背景から、若者世代を中心に非正規労働者の待遇改善を求める声は強い。総務省の調査によると、正社員として働く機会がなく、仕方がなく非正規雇用で働いている人は全年齢で16.9%だが、25~34歳では26.5%に上る。

実効性確保へ関連法改正が必要

同一労働同一賃金の指針案では、正社員と非正規労働者の基本給について不合理な差を認めないとしたほか、非正規労働者に昇給や賞与を認め、時間外手当の割増率についても正社員と同じにするよう企業に求めている。

最大の特徴は、基本給や賞与、福利厚生、教育訓練などについて企業の対応が「問題となる例」「問題とならない例」を具体的に示したことだ。

例えば、基本給に関して「生産効率や品質目標の達成でノルマを負っている正社員と、目標達成の責任がない非正規労働者で支給額に差がある」のは問題がないとした。

逆に問題がある例としては、「正社員が販売目標を達した場合に行う支給を、非正規労働者販売目標に届かなかったからといって、一切支給しない」ことなどが挙げられている。

ほかにも、「仕事の内容や成果と無関係な通勤手当などは、正社員か非正規労働者かを問わず同様に支払わなければならない」といった均等待遇の例を明記している。

現在も不合理な待遇差を禁じる法律の規定はある。しかし、どういったケースが不合理と判断されるかとの詳細は示されていない。指針案で具体例を示したことは、非正規労働者の待遇改善の大きな一歩だと期待されている。

一方、指針案では、意見が分かれる退職金や家族手当の扱いなどについては言及していない。急激な負担増を避けるため、企業の裁量を認めた。各企業において処遇体系全体を労使で話し合い、公正は評価に基づく賃金制度を構築することが同一労働同一賃金の実現に望ましいとしている。

ただ、この指針案に現時点で法的拘束力はない。実効性を持たせるためには、関連法の改正が必要になる。政府は、早ければ今月に開かれる通常国会でパートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の関連3法の一括改正をめざす。

今後の焦点は、正社員と非正規労働者に「合理的」とされる待遇差を付けた企業に対し、説明責任を負わせるかどうかだ。非正規労働者の待遇改善によって、正社員が割を食うのではないかと懸念する声もある。

政府には、企業も労働者も納得できる仕組みを作ることが求められている。

公明党の主張が反映

同一労働同一賃金に関して公明党は、「働き方改革実現推進本部」の提言などを通じて、正社員に対する非正規労働者の賃金水準を欧州並みの8割程度に引き上げることなどを強力に主張。今回の指針案には、こうした方向性が反映された。

党推進本部は、引き続き議論を重ね、政府の働き方改革実現会議が、同一労働同一賃金の「実行計画」を策定する今年度末に向け、最終報告をまとめる方針。これに対して、安倍晋三首相は「公明党の役割として、ぜひ主体的に取り組んでもらいたい」と期待を寄せている。

このほか公明党は、非正規社員の待遇改善に向けた取り組みとして、正社員に転換した企業への助成金の増額や、賃金規定などの待遇改善を行う企業を支援する施策を求め、2017年度予算案に盛り込んだ。

賃上げに向けた環境づくりを応援するため、年功序列によらない能力評価制度を整え、賃金アップを図る企業に対して助成する仕組みも創設する。

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